矯正治療のはなし

​工藤 泰裕
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下顎真下、上ぶどう

乳歯とこれから生えてくる永久歯の位置関係について知る事は重要です。 下顎の骨は大腿骨と同じ長管骨に分類されます。下顎骨は一本の骨がアーチ状になったと考えて良いでしょう。構造はシンプルで、下顎の永久歯は乳歯の真下に位置取りします。 上顎は複数の骨がパズルのように縫合で連結されています。 また、鼻との関係性を有し、副鼻腔、上顎洞などの空間もあり構造はきわめて複雑です。おのずと後続永久歯は限られた場所に位置取りすることになります。 その待機場所が独特なため、レントゲン画像上では混み合ったように写ります。 私は「ぶどうの房のように写る」という表現をしています。 このような上顎の永久歯であっても、先行する所定の乳歯方向に生えて行きます。 乳歯と永久歯の位置関係の覚え方、「下顎真下、上ぶどう」。 次の画像で知識の確認をしてください。 ある日、かかりつけの歯科医師から次のように言われたらどうでしょうか。 あなたのお子さんのレントゲンです。 顎の中で永久歯が重なり合っています。 これは顎が狭いからです。 将来凸凹になる。 今すぐに顎を拡げる必要があります。 ほとんどの親は動揺します。 先生に勧められるままに、顎を拡げる子どもが出てきても不思議ではありません。 レントゲン画像(以下、レ画像)の見え方は先に説明しました。 にもかかわらず、この先生は重なり合っているのは顎が狭いからと結論づけ、不安をあおっています。 では、本当に凸凹になるのでしょうか。 冒頭に示したレ画像の症例を、経年的資料を通して検証してみましょう。 【初診】 7才 女子 反対咬合を気にして当院に来院しました。 反対咬合の治療方法

進学と就職と転勤

進学や就職などで矯正治療が中断することのないようにしましょう。 そのためには、治療開始の時期をいつにするかが重要です。 私が永久歯の治療をする場合の治療期間は1年半から2年です。 また、成長期の二段階治療の場合は治療期間、観察期間がもう少し複雑になります。 転勤や進学で居住地が変わる可能性のある人であっても、計画的な治療をすることで、一応の目安がたちますので先ずはご相談下さい。 今回は他医院からの転医の症例です。 【初診】 当院初診 19才 保護者のお仕事の都合で転居を繰り返し、当院で3施設目になります。 いずれの歯科医院も院長は矯正治療に明るく、円滑に引継ぎが行われています。 本症例は抜歯によるマルチブラケット治療の経験があり、この時はマウスピースで微調整しているとのことでした。 前歯の変色は過去に、歯を強く打ったことによる歯髄壊死(しずいえし)によるものです。矯正治療には支障ありません。 転医症例の場合、前の治療を引き継ぐこともあれば、本症例のように新しい担当医の方針に切り替えることもあります。 検査資料を採り現状を把握します。 私はマルチブラケット装置で治療することにしました。 【治療後】 治療期間 15ヶ月 マルチブラケット装置を外し、保定に移行しました。 普段は保定装置を付けていますが、撮影の都合上外しています。 とくに永久歯の動的治療中は、中断が無いようにしたい。 進学のため親元を離れ、遠くに行く場合は注意してください。 私がその様な学生を扱う場合、マルチブラケット装置を外して保定装置(リテーナー)にした上で、次の進路に送り出します。リテーナーは指示通りに使用するこ

成人 叢生症例

叢生症例(そうせい~)。叢生とは歯列に凸凹がある状態を表します。 初診時の横顔のシルエットです。 頭部エックス線規格写真をトレースしました。 私たちが普段見ている家族や友人の顔は、顔の外観の軟組織を見ています。 私は人の顔を見たとき、その人の骨格や歯の状態を想像します。 顔の軟組織は骨と歯の裏打ちがあって形作られています。言い方を変えれば骨と歯の上に軟組織がのっかています(下図)。 この時の、歯の状態です。 口は顔全体の一部であるので、歯並び・嚙み合わせを治すときは、このことを考慮する必要があります。 同じ図に、「78話 抜くか抜かないかの話2」で紹介した、基準線を記入してみます。 本症例の下顎前歯の位置は前方12㎜でした。しかも歯列に中程度の凸凹があります。 凸凹を解消しながらも口元が出ないように、むしろ引っ込めるように考えます。 【初診】 20代 女性 検査資料を分析して診断をします。 抜歯分析では、抜歯判定の結果です。 上下の第一小臼歯 を抜歯して、マルチブラケット装置で治療を始めます。 【治療後】 治療期間は22ヶ月。 上顎の二番目の前歯は矮小歯(わいしょうし)といって、円錐形をしておりサイズも小さいです。矯正治療では、この点を考慮して全体を配列します。 撮影の都合上、保定装置を外していますが普段は装着しています。 【治療効果の判定】 初診                    治療後 【重ね合わせ図】 実線:初診  点線:治療後 1、上顎前歯:6.0㎜ 後退 と 2.0㎜圧下(※1) 2、上  唇:3.0㎜ 後退 3、下顎前歯:3.0㎜ 後退 と 3.0㎜圧下 4、下

反対咬合は放置しないこと

反対咬合症例の怖いところは、下顎骨が今後どれくらい成長するのかが、予測できないことでです。 ほとんどの症例は反対咬合の改善治療のあと、安定した経過をたどりますが、 一部の症例では、想定を超える力強い成長がじりじりと続く場合があります。 いずれにせよ、反対咬合症例の場合は、旺盛な成長をむかえる前に、上下顎の前後的関係を正しい状態にしておくことが必要です。 反対咬合症例は治療時期が大切です。矯正治療に明るい歯科医師に相談してください。 【初診】 9才 男性 検査資料を分析して診断をたてます。 治療は以下のように、二段階に分けて行います。 第一段階:反対咬合を治す治療 観  察:永久歯の生え変わり、成長の観察 第二段階:全体の歯並びを治す治療 保  定:治療後の観察 【反対咬合の改善】 あいにく、改善時の写真がありませんでした。 記録によると反対咬合の改善には2ヶ月を要しました。 その後は定期的に観察します。 【永久歯の萌出】 13才 永久歯の生え変わりは順調に進み、下顎骨の成長は安定しました。 この段階でもう一度検査をします。 診断の結果、非抜歯でマルチブラケット治療を行います。 【治療後】 治療期間 18カ月 反対咬合は治療の開始時期が重要です。 乳歯列の低年齢で治療することはありませんが、遅すぎるのはいけません。 小学生になったら、矯正歯科医の観察下におき、治療のタイミングをみてもらうのが理想的です。一方で、誰しもが来院時期が理想的であるとは限りませんが、気が付いた時点で受診したほうが良いでしょう。 私は遅いのはいけないと言いましたが、矯正治療上その時々で出来ることと出来ないこ

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