矯正治療のはなし

​工藤 泰裕
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簡単に治る方法はありますか?

不正咬合の原因は、ひとつではない。種々の要素が複雑に絡み合って生じていると考えた方がいい。 まず骨格だ。上顎と下顎の関係だけでも最低次の三つを考える。 前後的関係、垂直的関係、水平的関係。 そして歯。歯列の凸凹の有無、量は当然のこと、個々の歯の状態はどうなっているのか。例えば、形態異常、先天欠如、過剰歯、埋伏歯、むし歯、補綴物などだ。 顔の外観もまた治療上重要な情報である。 その他、習癖、口腔周囲筋群、嚥下、呼吸様式などは、ときに治療を難しくすることがある。 さて、以下の症例について、いっしょに考えてみよう。 (臨床では口の中だけで判断しない。きちんと検査資料を分析する必要がある) 【初診】 17才 男性 ①歯列の凸凹の程度はどうだろうか。 ②上下顎の前後的関係はどうだろうか。 ③垂直的関係はどうだろうか。 ①歯列の凸凹の程度はどうだろうかー中程度の凸凹がある。 ②上下顎の前後的関係はどうだろうか-上顎前突の傾向がある。 ③垂直的関係はどうだろうか-深い。下顎の前歯が見えない。 (臨床では上記項目は全て数値化して評価する) 検査資料を分析し診断をする。 上顎第一小臼歯は抜歯が必要、下顎は非抜歯、マルチブラケット治療を開始。 【治療後】 私は本症例を簡単に治しました。結果は以下の通り。 ①中程度の凸凹→解消した。 ②上顎前突の傾向→改善した。 ③咬み合わせが深い→改善した。 いつもの通り仕事をしたまでだ。 ここで、タイトルの「簡単に治る方法はありますか?」について考えてみよう。 まず、何をもって簡単と言うのか。 取外し式が簡単か、歯を抜かないのが簡単か、一本二本治すのが簡単か、

抜くか抜かないかの話2

口の中だけで判断していけないのは、重々承知の上であえて質問します。 次に示す二つの症例のうち、症例Aは歯列に凸凹があり、症例Bにはありません。 どちらかが抜歯症例で、どちらかが非抜歯症例です。 あなたは、どっちがどっちだと思いますか。 症例A                  症例B 歯列に凸凹があると抜歯で、凸凹がないと非抜歯でしょうか 次に、ふたつの症例の横顔を示します。 図は初診時の頭部エックス線規格写真にトレーシングペーパーを貼り、顔の外形を写し取ったものです。 症例A                  症例B 前歯付近に点線があります。 この点線は、一定のルールに従い作図し求められるもので、ここでは基準線と呼ぶことにします。 この基準線に対する下顎の前歯の距離は以下の通りです。 症例A 前方 8㎜ 症例B 前方17㎜ 私が利用している日本人のデータの平均値は、基準線の前方約8㎜。 つまり、症例Aの前歯の位置はこのままで良いことがわかります。 言い換えればこの位置を大きく変えないように治療しなければなりません。 一方、症例Bは、かなり口元が突出しており、治療に際しては9㎜後ろに下げた方が理想的であると解釈します。 抜歯・非抜歯を判断するには、歯列の凸凹の程度のほか、歯の位置や傾斜角度、顎の状態、口元の突出の程度などを全体に考慮する必要があります。 【症例A】 (症例Bは 45話 歯を抜く矯正 を参照してください) 13才 男性 診断の結果、非抜歯でマルチブラケット治療を行います。 【治療後】 治療期間 15カ月 症例Aは抜歯の必要はなく、症例Bは抜歯が必要でした。 抜

正しい診断ができない理由

犬歯が飛び出ているとうい点で、八重歯の症例に見えます。 でも、普通の八重歯とはチョット違う感じもします。 みなさんは、どう考えるでしょうか。 正面と横からの画像を見てみましょう。 【初診】 ※用語   歯 冠(しかん)   :歯の頭 歯 根(しこん)   :歯の根 中切歯(ちゅうせっし):1番目の上顎前歯、略称は1番 側切歯(そくせっし) :2番目の上顎前歯、略称は2番 私が違和感をおぼえたのは、犬歯の角度と位置です。 通常の八重歯は、あくまでも犬歯相当部の上方に位置しています。 本症例の犬歯は、歯冠が1番と2番の間に位置していること、 そして歯根は1番の方向に斜めにある様に見えます。 【途中経過】 残っていた乳犬歯を抜歯して、そこに向かって移動を開始します。 歯冠はある程度移動したものの、歯根の移動は少なく、歯槽骨が薄くなり歯肉の状態も良くありません。これ以上の移動を断念しました。 そこで、側切歯を横に移動させ、犬歯を下ろすことにしました。 犬歯の歯根の方向を考えると、この方が自然な位置どりです。 【治療後】 術者が症例に向き合うとき、その症例のおよその傾向をつかみ、どのカテゴリーに分類されるか考えます。この時、先入観が強すぎてはいけません。思い込みは思考の柔軟性を失わせ、誤診の芽を生むからです。 例えば、不正咬合には様々の成り立ちがあるにもかかわらず、 一部の歯科医師は、不正咬合の原因は顎の狭さにあると信じています。 この前提があると、症例のどこかに狭さを見つけようとする心理が働きます。 狭さの理由に利用されるのが、歯列の凸凹やレントゲン写真上での永久歯の配列状態などです。

歯並びを治そう

顔は知っているけど名前が出てこない。なんてことがあります。 例えば、私の場合。 痩せていて、眼鏡をかけている、髪の毛は薄い、顎ひげがあった。 という具合に、その人の顔の特徴をとらえることは出来ます。 しかし名前となると、急に頼りなくなる。加藤だったか、古藤だったか。 顔には人それぞれの特徴があるので、記憶に残りやすいのでしょう。 口元も特徴の現れやすい場所、治せるものなら治した方が良い。 【初診】 13才 女性 いくつかの検査資料がありますが、最も重要なのが頭部エックス線規格写真です。 レントゲン写真はただの白黒の画像です。それを読み解く能力が術者に備わっている必要があります。抜歯・非抜歯の判定、歯の移動方向の把握、骨格の状態、その他、頭部エックス線規格写真には治療上必要な情報が沢山詰まっています。 本症例は抜歯の必要があり、マルチブラケット装置で治療を開始しました。 【治療後】 最近は、テレビなど人前に露出する機会の多い人に、歯並びが悪い人をあまり見かけなくなりました。優秀なアスリートもまた、きれいな歯並びをしています。 しかし、歯並びを治すのは、彼ら彼女らだけではありません。 私たちにとっても、歯は命。 毎日の暮らしの中で、人とのかかわりがあります。なにより健康が大切です。 悪い歯並びを放置する理由は見当たりません。 関連記事:頭部X線規格写真や抜歯・非抜歯の参考になります。 47話 八重歯が可愛かったのは昔のこと 62話 抜くか抜かないかの話 65話 成人 上下顎前突症例 68話 口元を引っ込めたい

成人 反対咬合症例

あきらめる必要はありません。 成長期を過ぎた反対咬合であっても、矯正治療が可能なことも多くあります。 外科矯正になるのか、矯正治療が可能なのかは診れば分かります。 ご相談ください。 【初診】 19才 男性 顔の状態は示しませんが、反対咬合の特徴をもっています。 検査資料を分析して、精確な診断をたてます。 下顎の第一小臼歯の抜歯が必要です。 マルチブラケット装置で治療を開始します。 【治療後】 治療期間 24ヶ月 撮影のため装置を外していますが、当面の期間は保定装置をはめています。 上下顎のズレの程度が著しい場合は、外科矯正が必要になることもあります。 私がかつて大学病院に勤務していた頃、外科矯正を数例担当しました。 外科矯正は顎を外科的に移動させるので、顔貌の改善は顕著です。 必要があれば外科矯正も選択肢の一つと考えて良いでしょう。 その場合は大学に紹介します。 【治療前後の比較】 わかりやすいように、上下の犬歯にマークを入れました。 下顎前歯が後退したことで、口元が自然な形になりました。 治療には、それ相応のテクニックが必要ですが、そのノウハウを細かく述べる場所ではないので割愛します。 反対咬合は全身の成長発育と関連して、その症状が変化します。 第二次成長期の旺盛な成長をむかえる前に、矯正治療をすることが望まれます。 かといって、乳歯列の低年齢で治療する必要は全くありません。 小学校に入学してから、矯正歯科認定医に相談するとよいでしょう。 関連記事 (以下のタイトルをタップすると、記事にジャンプします) 19話 責任を果たす 34話 ちょっと反対咬合?、すごい反対咬合? 38

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