矯正治療のはなし

​工藤 泰裕
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顔を治す

さっそくですが、本症例の診断結果を以下に示します。 ①骨格性反対咬合である ②下顎が前に誘導されている ③かつ、左に顎変位していく ④上顎前歯2本の先天欠如 ここに挙げた点について、ていねいに対応していきます。 ただ、ひとつだけ治療を難しくする要素がありました。 それは年齢です。小学6年生の女子でした。もし、あと1年遅いと治療は困難なものと なります。なぜなら全身の成長に連動して、下顎は増大する傾向があるからです。 幸い、この時承諾を得ることができましたので治療ができました。 【初診時口腔内写真】 小学6年生  女子 反対咬合でありながらも、下顎が向かって右に変位しています(本人の左)。 【反対咬合改善時】 反対咬合は4ヶ月で改善されました。写真は6ヶ月目のもの。 本症例の問題点は ①骨格性反対咬合 ②下顎が前に誘導される ③かつ、左に顎変位する ④上顎前歯2本の先天欠如 第一段階の目的である、①②③は改善しました。 検証してみます。 【頭部エックス線規格写真】 初診時と反対咬合改善時 うっすらと、軟組織の横顔が見えます。初診時の横顔は骨格的反対咬合の特徴的な横顔 をしています。原因にアプローチしているので、軟組織の横顔も改善しました。 【重ね合わせ図】 図は脳頭蓋底での重ね合わせです。 初診:実線、反対咬合改善時:点線 2枚のレントゲン写真には6ヶ月の時間差があります。小学6年生 女子、成長期であ ることを考えると、実線の前方に点線があるはずです。しかし、そうなっていない部位 は人為的な操作、介入による動きです。 1、前頭部:点線は1.0㎜ 前方⇒成長 2、上顎骨:   2.

装置は何でもいい、ただし筋は通せ。

矯正治療は原因にアプローチすることで、達成されます。 そのためには資料を正確にとること、正しい診断をすることが必要です。 間違った診断は、間違った治療に発展します。 【初診時】 小学1年生  男子 反対咬合は次のタイプに分類されます。 ①歯性の反対咬合:歯の傾斜角度が、たまたま反対。 ②骨格性の反対咬合:上顎骨・下顎骨、そのものが反対。 ③機能的な反対咬合:一部の歯の接触を避け、顎を前に出す。 ④上記の合わさったもの。 本症例の診断は上顎前歯の内側傾斜と下顎の機能的前方位による反対咬合症例です。 【反対咬合改善時】 適切な時期に適切な治療を施せば効率よく治ります。 本症例は1か月かかりません、写真は2か月目のものです。 反対咬合は改善しました。 治るように治療しているので治って当たり前ですが、私が伝えしたいのは、なぜ治った かです。問題点を抽出しそれを解消すれば治ります。 検証しましょう。 【頭部X線規格写真】 初診時と反対咬合改善時 頭部X線規格写真は条件を一定にして撮影します。 術前術後のレントゲン写真を重ね合わせると改善のメカニズムが分かります。 これは、トレーシングペーパーに構造物を写し取って表します。 【重ね合わせ図】 本症例は 「上顎前歯の内側傾斜よって、下顎前歯と上顎前歯だけが衝突する時間帯がある。これを避けるため、無意識に下顎を前に出すため反対咬合になっている」 状態でした。よって、 「上顎前歯を外側傾斜させ、歯の衝突を解消すれば、下顎は前に出ず、本来の位置に復帰して反対咬合が治る」 はずです。 ひとつずつ見てみましょう。 実線:初診時、点線:反対咬合改善時 図

ただしい矯正治療

ブログで紹介している症例は全て私が施術しています。 よって、画像には「kudo-ortho.com」の透かし文字を入れています。 さて、本題です。歯列の凸凹は、顎の大きさと歯の大きさとの間でバランスを欠いた時 に発生します。したがって、治療はバランスをととのえることで完成します。 どうバランスをとるか、問題は正しい診断が出来るかどうかです。 「この子は顎が狭いです。顎を広げましょう」、「拡大装置を入れます」 診断が出来ていない典型例です。 【初診時】 小学4年生 女子 顎が狭いか・狭くないかは模型分析で判断します。 診断で本症例の顎の幅は標準的と判定されました。したがって、歯列拡大の必要はあり ません。歯列の凸凹の原因は歯の大きさです。ひとつひとつの歯のサイズがわずかに大 きくても、全体としては重なったり、とび出したりします。 本症例の治療は、二段階に分けて行います。 第一段階:前歯の機能的障害の除去 第二段階:全体的な機能的咬合の確立 【機能的障害の除去】 前歯の関係が変わりました。 犬歯相当部の歯ぐきが盛り上がっていますが、生えてくるのを待ちます。 【永久歯萌出】 中学2年生 全て永久歯が生えそろいました。 この段階で再検査し、もう一度診断をします。 本症例の歯列の凸凹は、標準的な顎の大きさに対し個々の歯のサイズが大きいことで 生じていました。では、どうバランスをととのえるか。歯を小さくしてととのえます。 抜歯です。 勿論、抜歯・非抜歯の判定は抜歯分析という診断方法を経て慎重に行います。 さて、ここで考えてみましょう。「抜歯が悪で、非抜歯が善か」。違います。 イメージや感情

最小限の介入で効率よい治療。

歯や顎に機具を付けて、それらを移動させる。矯正治療は人間の体に介入するので、 慎重な対応が必要です。術者は少しだけ手を施して軌道修正する。正常な成長発育にの ったなら、あとは機具を外して、観察する。 私は、最小限の介入で、効率よく治療するのが良いと考えています。 【初診時】 小学校3年生  男子 向かって左上2番が反対咬合になっています。 この部位で、不良な接触があり歯に負担過重がかかっています。同時に、この部位のひ っかりは、下顎を不用意に前方に誘導する原因になっています。 早期に解消する必要があります。 【第一段階】 反対咬合は改善し、歯の負担過重と下顎の前方誘導が解消され、正常な成長発育の軌道 に乗りました。 後は定期的に歯の生え変わり、顎の成長などを観察していきます。 【観察中】 小学校5年生 だんだん、永久歯が生えてきました。 【永久歯の萌出】 高校1年生 全ての永久歯が生えました。 ここまで、特に問題なく経過しました。 永久歯の凸凹はなく、下顎の過度な成長もありませんでした。 第二段階の治療の必要性はなく観察を終了しました。 本症例は、初期に矯正装置を使用して正常な成長発育にのせ、あとは機具を外して観察 してきました。装置を使ったのはわずかの期間です。 矯正歯科認定医はその症例がもつ特徴を把握しています。もう少し観察してもいいの か、来年には治療した方がいいのか、放置するとどうなるか、治療しなくてもいいのか など予測が出来ます。 一方で、無計画に装置を使用させて、結果的に治療効果がないか、あるいは悪くなった という例もあると聞きます。歯科医院選びは慎重にしてください

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