矯正治療のはなし

​工藤 泰裕
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乳歯を咬合に参加させた症例

歯列に凸凹のある症例です。 検査資料を精査した結果、非抜歯で治療可能です。 さて、この症例、よく見るとちょっとだけ違和感があります。 歯の形を左右で見比べていきます。 下顎歯列の写真で、向かって右側の臼歯部に一本だけ形の違う歯があることに気付きましたか。 レントゲン写真で確認してみましょう。同部位にあるのは乳歯です。後続の第二小臼歯は先天欠如です。 【初診】 12才 男子 歯列の凸凹を気にして矯正相談のため来院しました。 向かって右側の臼歯部にあるのは乳歯です。後続の第二小臼歯は欠損しています。 【治療後】 非抜歯でマルチブラケット治療を施術。 治療期間 19ヶ月 現在の条件の中で、いろいろシミュレーションして最良と思われる方法を採用します。 本症例のように、後続永久歯の先天欠如に伴う乳歯の晩期残存の場合、乳歯は可及的に保存します。実際の治療では乳歯になるべく矯正の力が加わらないように配慮します。また大きさの違う歯を配列するので、左右対称性や上顎の歯との咬合関係を考える必要があります。 永久歯の先天欠如はそれ程珍しいことではありません。乳歯の残るもの、残らないものの別はありますが過去にもいくつか記事にしています。 関連記事 10話 矯正相談 20話 仕上がりを予測する・先天欠如の場合 25話 乳歯の晩期残存 43話 過剰と不足

反対咬合は治した方がいいと思います。

不正咬合であっても、治療をしない人はいます。 それはそれで良いでしょう。何事もご本人の意思が尊重されるべきです。 だだ、どんどん悪くなって行く様を目の当たりにした時には、残念に思います。 学校歯科検診において、反対咬合の症状が去年より悪化している児童に会うときは複雑な気持になります。私は所定の書式に反対咬合であることを記載することは出来ますが、それ以上のことは出来ません。その後、専門機関を受診する・しないはご両親の判断にゆだねられます。 不正咬合は適切な時期に適切な治療をすれば治ります。しかし、なにもしなければ治りません。 適切に治療した症例を紹介します。 【初診】 7才 男子 反対咬合を気にして来院しました。 はじめは矯正相談です。現在の状態、将来のこと、その他全て説明します。 矯正治療を希望する場合は後日連ご絡下さい。検査を行います。 検査資料を精査した結果、本症例は上顎前歯の内側傾斜と下顎の機能的前方移動のために反対咬合になっていることがわかりました。 矯正治療は原因にアプローチします。 上顎前歯の角度を修正して上下前歯の不良な衝突を回避させれば、下顎の前方誘導が除去され、反対咬合は治るはずです。 【反対咬合の改善】 治りました。 正しく治療されたならば、ものの数か月で改善します。 この後は定期的に観察します。 永久歯の生え変わりや顎の成長を診ていきます。 【永久歯の萌出】 14才 永久歯が生えそろいました。 この時点で再評価のため検査をします。 さらに緊密な咬合を獲得するため、第二段階の治療をはじめます。 マルチブラケット治療の開始です。 【治療後】 治療期間12か月。

何もしない勇気

今回の症例は矯正相談をした後、すぐには治療せず「観察」にしました。 矯正治療は適切な時期に適切な治療をするのがベストであり、そのタイミングを見極めるためには待つことも重要です。 ただし、自分で判断せず矯正歯科に明るい歯科医師に相談して下さい。 【症例1】 3才 男子 上下の前歯が接触せず離れていることを気にしての矯正相談です。 ご両親の心配はよくわかります。しかしこの時点では積極的な治療の必要はありません。 【症例2】 5才 女子 向かって左側(本人の右側)の乳犬歯が逆になっています。 下顎全体が左にズレて、正中もそれに連動しています。 要注意な症例です。きちんと観察していきます。 【症例3】 6才 女子 下顎の永久前歯が生えると、上顎の乳歯の先と衝突するようになりました。 とりあえず、上顎の前歯の生え変わりを待って、その時の接触関係を確認します。 【症例4】 6才 男子 症例3と違う患者さんですが、上顎の前歯が生えてくると反対咬合の傾向がでてきました。もう少し観察して治療の時期を考えます。 【症例5】 下顎の2番目の前歯が内側に生えてきました。 やはり観察します。 【症例6】 乳歯列期の反対咬合症例です。 後に治療に至りますが、この時点では数か月ごとの観察で問題ありません。 矯正治療の原則は原因にアプローチすることです。 したがって、原因がはっきりするまで待つのが筋です。 必要のない矯正治療をわざわざする必要はありません。その必要性を見極めるための観察です。歯科医師が目の前の子どもに対し何もしないのも、矯正治療上の判断なのです。 一方で、年に1~2回の定期観察を数年続けていく

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