矯正治療のはなし

​工藤 泰裕
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歯はどこに並べれば良いか

歯列の両側は頬っぺた、前方には唇がある。内側は舌です。 いづれも筋肉のかたまりであり、歯列は常に内から外からの圧力にさらされています。 これに咬合力が加わります。 この様な環境にあって、歯列はなるべく居心地のいいところ、すなわち、力の中立地帯、ニュートラルゾーンに位置どりしようとします。歯列はこうしたバランスの中に存在しているのです。 では、バランスが崩れるとどうなるか考えてみましょう。 一本の歯が後天的に失われたケースを示します。 【初診】 15才 男性 なぜ前歯を抜いたのか、それ以前はどういう歯並びであったかは不明です。 抜いた後、徐々にずれてきたとのことでした。 検査資料を分析して診断をたてます。 上顎のみマルチブラケット装置を装着し治療をはじめます。 【治療後】 治療期間 16カ月 矯正治療で歯を移動させる場合、どこに歯を配置すればいいでしょうか。 歯列はバランスの中に存在することは前に述べました。本症例の様に一本の歯が失われてもバランスが崩れて歯並びに影響しました。 そう、歯は圧力の中立地帯に配列するのが理想的です。 矯正治療を必要とするような状況は、そもそもアンバランスな状態にあります。 このアンバランスをバランスへと誘導するのが矯正治療なのです。 従って、正しい診断のもとに必要があれば歯を抜くこともあります。 その真逆が歯列拡大による非抜歯治療です。 過度な歯列拡大は、歯列を舌から遠ざけ、頬に近づけます。このこと自体、ニュートラルゾーンからの離脱を意味しています。無理やり非抜歯で治療できたとしても、治療しているつもりが、もっとアンバランスにしているのです。 非抜

顎が発達しない?

「今の子どもは柔らかいものを食べているから顎が発達しない。だから凸凹がある」 はたして本当でしょうか。 凸凹の原因が柔らかい食事による顎の未発達であるとするのは早計ではないのか。 早計(そうけい)とは「早まった考え」「軽率な考え」を表す言葉 なぜ、軽率な考えか。 ①今の子ども 今どきの子とか、今の若いものは云々などは使い古された日常語。 今とはいつで、どの年齢を指しているるか漠然としていてわからない。 ②柔らかいものを食べている 日本の普通の家庭の食卓には、何やら柔らかい物が上がっているのだろうか。 意味不明。 ③顎が発達しない まず、発達を定義します。ここでは大きくなるという意味で使っているのでしょう。 顎の大小はノギスで計測すればわかるので、数値を示してもらいたい。 ④だから凸凹がある 歯列に凸凹が出現する原因は他にもある。そのことを無視している。 「今の子どもは柔らかいものを食べているから顎が発達しない。だから凸凹がある」 なるほど、耳にはスッと入ってきます。 しかし非常に曖昧で根拠がひとつも示されていないことがわかりましたか。 【初診】 10才 女性 この子は、今の子どもだから、柔らかい物を食べていたのでしょうか。 硬いものを食べると顎がの発達するのでしょうか。 【永久歯の萌出】 14才 永久歯の萌出を待ちました。 検査資料を分析して診断をたてます。 模型分析をしたところ、本症例の顎の大きさは、幅径・長径とも平均値でした。 顎の発達は正常である証拠です。 凸凹の原因は歯のサイズが少し大きいことでした。一本の歯では少しのサイズアップでも全体の総和としては、顎におさまりきれ

成長と治療時期

成長とは何か。 成長とはものが大きくなることをいいます。 子どもの体は大きくなって大人の大きさまで達します。 矯正治療では、この成長を利用することがあります。 私が治療時期にこだわるのはこのためです。 骨格性の上顎前突症例、男性です。 【初診】 11才 検査資料を分析して診断をします。 本症例の治療計画は以下の通りです。 第一段階:成長のコントロールによる顎関係の改善 観  察: 第二段階:全体の歯並びの改善 観  察:保定 写真は掲載していませんが、初診時の横顔は上顎が出て、下顎が後退した感じです。 上顎骨と下顎骨の前後的関係に大きな差があり、横顔に反映しています。 第一段階の治療の目的は、この顎の関係を修正することです。 冒頭に、矯正治療で成長を利用すると言いました。 上顎骨の成長を抑え、下顎骨の成長を促進するとどうなるでしょうか。 やってみます。 【第一段階】 13才 【犬歯にマークを付けて比較】 初診 第一段階 犬歯関係が変わっているのがわかります。 上顎犬歯に対し下顎犬歯がこの位置にあるのが正しい状態です。 よく見ると臼歯関係も変化しています。 【第二段階】 16才 顎の前後的関係は改善されました。 ここまで前歯には装置をつけていないにもかかわらず、出っ歯の感じは見あたりません。 この時点でもう一度、検査・診断をします。 非抜歯でマルチブラケット治療を開始します。 【治療後】 動的治療期間 16ヶ月 ここまでの治療をふりかえります。 第一段階は、上顎前突の状態にあった上下顎の関係を修正する期間にあてがいました。11才から16才まで、身長は28.5cm伸びました。 この

いつ治るの

何年にも渡って装置を使用しているけど改善が見られない。 という話しをたまに聞きますが、いつ治るかわからないようでは困ります。 ではなぜこの様なことが起きるのか考えてみましょう。 不正咬合には様々な種類があります。同じような症例であっても、その原因はそれぞれ違います。従って、正確な診断をして、症状に見合う装置を選び、その都度調整する必要があります。もしここにミスマッチや調整不良があれば、残念ながら治りません。 指示通り一生懸命に使っても、治るはずがないのです。 これが答えです。 私には治す責任があるので、使用する装置には慎重になります。当然のこと、取り外し式装置ではなく、マルチブラケット装置を主に使用します。 マルチブラケット装置は歯の移動に、術者の意思を正確に反映させることが出来る優れた装置です。最近の若い人はワイヤー矯正と呼んでいるようです。 しかしながら、いくら優れた装置であっても装置はただの道具にすぎません。 術者が良ければ良い効果を発揮しますが、術者が悪ければ効果がないか、悪い効果を発揮します。 つまり、矯正治療で一番重要なのは診断なのです。 きちんと診断が出来ないとか、そもそも診断していないなどは論外。 精確な検査資料を採り、正確に分析して問題点を抽出します。 解決の道すじを立てたなら、丁寧に仕事をすすめていきます。 【初診】 13才 男性 通法に従い、検査資料を分析して診断をします。 本症例は第一小臼歯を抜歯する必要がありました。マルチブラケット治療を開始します。 私の施術するマルチブラケット治療では、最低月一回の来院が必要です。その時にはワイヤーの調整や交換などを

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