

101話 骨格の異変に気付かず時間が経過した例
ひとつの事にこだわり過ぎると、まわりが見えなくなる。私たちは普段の生活でも経験することです。 このことは矯正治療にも当てはまります。 例えば、歯列に凸凹があり、そこに集中するあまり他の症状を見落してしまうことがあります。 他の症状で特に注意を払わなければならないのは、骨格的な問題があるかないかという点です。歯の問題と骨格の問題は全く別のものなので、視野を広くもって全体像を見失わないようにしなければなりません。 【初診時正面観】 前歯に少し凸凹があります。 本人は、この程度の凸凹ならいつでも治るかもしれない。と思っていたことでしょう。 はたして、そうでしょうか。 【初診時側面観】 反対咬合の傾向があります。 本症例の反対咬合の程度は少しではなく、かなり強い骨格的な反対咬合です。 上下の歯の先端だけ見ると少し反対になっている程度ですが、歯の根元の歯肉に着目すると、下顎がせり出している様子がわかります。この状態は顔の外観にも反映しています。 反対咬合症例は治療の時期が重要です。 乳歯列期での治療は必要ありませんが、小学校に入学したならば専門の先生に相談


100話 歯の移動を制御するということ
歯や顎はどこに移動させればいいでしょう。 あっちか、こっちか、そしてどのくらいか。 矯正治療では、この目標をきちんと決めておく必要があります。 そのためには、精確な検査資料を採得し正確に分析します。 計算はコンピューターがやってくれますが、その数値を解釈するのは人間です。 【プロフィログラム】 全ての症例は、頭部エックス線規格写真(横顔のレントゲン)を撮ります。 下図は、頭部エックス線規格写真を模式的に表して、平均値と重ね合わせたものです。 ここでは患者を赤線、同年齢の平均値を黒線にしています。 また、歯・顎・顔の外観のランドマークを距離計測、角度計測し、実測値・平均値・標準偏差を数値化しています。 ここから症例を提示します。 一症例につき画像は、初診時と治療後の口腔内写真、初診時と治療後の頭部エックス線規格写真、重ね合わせ図の5枚です。重ね合わせ図では初診を実線で、治療後を点線で表しています。 尚、各症例は過去の記事を再掲したもので、詳しい解説はそちらを参照してください。 今回は歯や顎の移動で顔の外観が良くなることを再認識していただきたい。 【


99話 矯正治療をする人・しない人
あなたは次に示す歯並び・咬み合わせを見て、どう思いますか。 ゆっくりした速度で見ながら、じっくり考えてください。 【A】 私はきれいな歯並び・咬み合わせだと思います。どこにも違和感はありません。 これくらいきれいだと、笑ってもしゃべっても爽やかこのうえないでしょう。 このブログは「矯正治療のはなし」ですから、ここでタネあかしをします。 これは矯正治療をした後の状態です。もはや最初はどうだったか想像できませんね。 では、最初を見てみましょう。 【B】 矯正治療をする前の状態です。 なんか、へんな感じの歯並びです。 矯正治療をする人としない人の考えの違いはわかりませんが、世の中には不正咬合を放置している人がいるのも事実です。私から見れば、もったいないなあ、やれば治るのになあといった印象を受けます。 あなたが矯正治療をすれば【A】になることが出来ます。 何もしなければ【B】のままです。 なあたはどちらを選びますか。 関連記事 18話 矯正治療をする・しない 27話 八重歯は可愛いか 33話 不正咬合はなぜ治さなければならないか 76話 歯並びを治そう


98話 歯を移動させるということ
次の二枚の写真は別人のものです。 二人とも見た目が気になるとのことで矯正相談に来られました。 みんな、矯正治療をする一番の動機は「見た目」です。 Aくん Bさん この見た目を治す方法として、自分の歯をここからあっちへと移動させることが出来たらイイと思いませんか。 では、やってみましょう。 【Aくんの場合】 初診 治療後 【Bさんの場合】 初診 治療後 矯正治療の素晴らしさは、自分の歯をここからあちらへと移動させて歯並び・咬み合わせを改善出来る点にあります。歯を削って被せ物を入れる式の治療とはまるで別物です。 (削った歯は二度と元に戻らない) 矯正治療をする動機の一番は「見た目」でした。反対咬合、上顎前突、埋伏歯や過剰歯などの不正咬合であっても、その動機に変わりはありません。 矯正治療にあたる歯科医師は、その見た目を最初よりちょと良くした程度では不十分です。美しさと機能をあわせもった顎顔面を構築するようにしなければ治療の意味はありません。歯科医師に求められる資質は正しく診断する能力と優れた技術です。