

66話 埋伏歯 ④
シリーズ4回目。 埋伏歯を歯列に誘導するのも、矯正歯科の仕事です。 【初診】 中学生 女性 前歯がありません。 骨の中に埋まったままで、生えてこれない状態です。 このままでは、日常生活にいろいろ支障をきたします。 埋伏歯の誘導であっても、普通の矯正治療と同じように検査資料を採り、きちんと分析します。症例によっては、CT断層撮影が必要となることもあります。 【途中経過】 局所麻酔下で電気メスを使って歯肉の処置、必要に応じ骨を除去します。 埋伏歯に金具を接着して牽引の足掛かりとし、弱い力で少しずつ引っ張ります。 ここまで来れば、いつもの矯正治療です。 本症例の全体像は、八重歯を有する歯列の凸凹症例です。 通法に従い矯正治療を進めます。 【治療後】 埋伏歯を歯列に誘導する際には、いくつか考慮すべき点があります。 埋伏歯の位置 〃 方向 〃 形 〃 骨癒着 など。 条件によって、牽引・誘導の不可能な場合は抜歯の対象となります。 埋伏歯は個々の症例によって状態が異なります。 誘導か抜歯かの判断が難しいこともあるので、慎重な診断が必要です。 気になる


65話 成人 上下顎前突症例
重ね合わせ図は治療効果を検証するうえで、重要な情報を提供してくれます。 例えば、どう治ったか、どう治らなかったか、作用は反作用は、など目で見て分かります。術者の治療技術を如実に反映する鏡とも言えます。 上の重ね合わせ図は今回の症例です。説明はあとでします。 口の中を診てみましょう。
【初診】 30才代 女性 先ず口を閉じた状態。上下の歯列が咬み合ったときの関係「咬み合わせ」を確認します。次に口を開けた状態。歯列の凸凹の量「歯並び」を確認します。 次に、咬み合った状態のときの横顔を覗き込みます。顎顔面全体のバランスを観察します。 通法に従い、検査資料を分析します。本症例は、小臼歯の抜歯が必要となりました。 【治療後】 動的治療期間 16カ月 装置を外した時の写真です。保定装置に置き換えて保定に移行します。 みなさんが使用する装置に関心があることは十分理解できます。ただ、何を使うかより、どう治るかを考えてみて下さい。私の使用する装置はマルチブラケット装置です。歯の表側に付けるタイプでワイヤー(針金)で治します。 【治療効果の判定】 矯正治療がまぐれ


64話 安易な歯列拡大・部分矯正・歯を削る方法
不正咬合を治療するときは、歯と顎顔面のバランスを考える必要があります。 例えば、不正咬合の種類によっては、顔つきに特徴がでます。 下顎前突(反対咬合)は下顎前突の顔に、上顎前突(出っ歯)は上顎前突の顔に。 ここまでは何となく想像できると思います。 次は聞きなれない言葉です。 上下顎前突という症例があります。これは横顔のバランスの中で、口元が出ている感じのものを言います。 いずれにせよ、上に挙げた各症例は矯正歯科医師が検査資料を分析した結果、使われる名称です。他人の顔をぱっと見て判断してはいけません。 【初診】 17才 女性 検査資料を分析して診断をたてます。 上顎前突と歯列の凸凹を併せ持った症例です。 抜歯分析の結果は抜歯判定です。 【頭部X線規格写真】 頭部エックス線規格写真では、数値化した患者データと日本人平均値を比較し、問題点を抽出します。 上顎前歯部には鮮明に見えるのものと、さらに前方に薄く見えるものがあります。 上顎前突の程度は著しく、画像では分かりにくいですが、口元は突出して口唇閉鎖が困難です。 【治療後】 マルチブラケット装置を外し


63話 複雑なものは単純にするといい
年齢が上がると歯の移動速度が遅いとか、治療期間が長くかかるとか、そんなことはありません。とくに矯正治療が難かしくなるわけではありません。ただ、差し歯やブリッジなどの補綴物(ほてつぶつ)があったり、歯周病になっている場合は、そちらへの対応が必要になることはあります。 私は基本的に年齢制限はないと考えています。 今回は、歯周病、補綴物、欠損歯という条件のある症例です。 【初診時】 女性。 人間は一人ひとり違うように、同じ診断はなく、治療方針も個々の症例で違います。 歯周病、補綴物、欠損部位などの条件をふまえて、その時点での最善の方法を考えます。 歯列の凸凹が顕著です。 抜歯部位、スペースの処理に工夫はしますが矯正治療をする上で、いつもとやることは変わりません。 【治療後】 動的治療期間は1年8ヶ月。 歯並び・咬み合わせは改善しました。色や形は、このあと修正すれば良いでしょう。 保定に移行します。 初診時の本症例は、歯列の凸凹が顕著で収拾がつかない状態でした。それを治すのが私の仕事です。 検査資料を読み解き、問題点を整理していきます。複雑を単純に、混乱