

27話 八重歯は可愛いか。
テレビなどで活躍する芸能人やアイドルのうち、デビュー当時には八重歯があったのに、いつの間にか八重歯が無くなっている人がいます。あなたは何人、思い出せますか。何故、彼、彼女たちは歯並びを治したのでしょうか。理由は明白です。綺麗になりたいからです。あるいは、仕事上必要に迫られたのかもしれません。役者さんの場合、役柄にそぐわない場合もあるかもしれません。もし戦国武将に八重歯があったらちょっと、ピンときませんね。芸能人でない私たちも、不正咬合を放置することのメリットはありません。 初診時年齢 23歳、 女子 【初診時口腔内写真】 いつも通り検査・診断をします。ひとくちに、歯の凸凹と言っても、いろんなタイプがあります。 ・上顎前突を伴うもの ・反対咬合を伴うもの ・骨格的問題のないもの ・咬み合わせが浅いもの ・咬み合わせが深いもの ・その他 タイプによって術式・手技を変えます。針金の曲げ方、歯の移動の仕方、力加減、移動部と固定部の関係など。ちょっとしたさじ加減が治療効果に影響します。 【マルチブラケット治療終了時】 歯列から逸脱した犬歯を歯列内に誘導し


26話 上の前歯が一本ない場合。
ほとんどの患者さんは、歯科医師であればだれでも矯正治療が「出来る」と思っています。 違います、「出来ません」。説明します。 歯科医師が矯正治療の医療行為を行う事自体は違法ではありません。この点において「出来る」でしょう。重要なのはちゃんと「出来る」かという事です。あなた本人、あなたの子供が矯正治療を受けようとするときは、担当医が日本矯正歯科学会認定医であることを確認すべきです。北海道では約150人が登録しています。けして多い数字ではありません。日本矯正歯科学会のホームページで確認できます。 今回も難しい症例です。 12才 男子。いつもの様に検査・診断をします。 【初診時口腔内写真】 この症例の第一印象はどんな感じですか。 ・出っ歯 ・凸凹 ・すきっ歯 そんなところでしょう。 本症例の全体像は「上顎前突傾向で歯列に凸凹がありながらも、上顎の前歯が一本欠損している症例」です。 治療方針 第一段階:顎の成長のコントロールによる顎関係の改善 第二段階:機能的咬合の確立 【マルチブラケット治療終了時】 出っ歯の感じ、歯列の凸凹は改善しました。 本症例は、上


25話 乳歯の晩期残存
乳歯の下、顎の骨の中にあるはずの永久歯が先天的に存在しない場合、歯の生え変わりが行われず乳歯が歯列に残ることがあります。このこと自体、比較的多く見られることで、乳歯が他の永久歯と協力して機能していれば、特に問題ありません。今回は、乳歯の晩期残存(ばんきざんぞん)のため不正咬合が生じた例を紹介します。 初診時年齢 13歳 女子 【初診時口腔内写真】 向かって右下、黒っぽい歯が乳歯です(本人の左)。全体的にも歯列の凸凹があります。 【初診時レントゲン写真】 後になってわかったことですが乳歯を抜歯(ばっし)した時、乳歯と骨との癒着があり、歯を抜くのに苦労しました。通法に従い、検査・診断をします。 【マルチブラケット治療終了時】 本症例は、乳歯と顎骨との間に骨癒着が認められました(こつゆちゃく)。このことが、同部位の骨の高さの成長を阻害し、周辺の歯列不正をまねいた可能性があります。乳歯の抜歯スペースは、後ろの第一大臼歯を移動させて閉鎖し、同時に歯列全体の凸凹も改善しました。ここまで触れませんでしたが、下顎の前歯が一本無いのに気づきましたか。本症例は、下顎


24話 顔が曲がっている。(顎偏位)
顎偏位(がくへんい)。下顎が横にズレて咬んでいる状態、顔もそれに伴って偏位しています。下顎のズレの原因は次のことが考えられます。 ・骨格的な原因として、下顎の骨が変形している場合。 ・機能的な原因として、歯の不良な接触で下顎が誘導される場合。 本症例は後者が原因でした。すなわち、上顎歯列が狭いことで下顎歯列と咬み合わせが調和せず、咬もうとすると横にズレるタイプでした。 症例は初診時年齢17歳、女子 【初診時口腔内写真】 上顎に対し、下顎が向かって左にズレています。(本人の右)顔もそちらに曲がっています。 【初診時マーク入り】 わかりやすくするため、同じ写真に3ヶ所マークを入れてみましょう。 正中のズレはわかりますね。臼歯部について説明します。向かって右が正常な関係、上の歯列が外側にあるのが正常です。向かって左は、上が内で下が外、逆転しています。 通法に従い、検査・診断をします。 ①上顎歯列の拡大 ②抜歯、マルチブラケット治療 上顎歯列の拡大をはじめます。 【上顎歯列の拡大終了時】 写真は口を開けたところではありません。これで咬んでいます。上顎歯列


23話 反対咬合の怖い話し
タイトルの「反対咬合の怖い話し」とは何か。 実例を紹介します。今回は反対咬合が改善した後、また反対咬合になった例を取り上げます。 怖いですね。 症例は小学1年生、女子。反対咬合を気にして来院されました。 通法に従い、検査・診断をします。 本症例の反対咬合の原因は、上顎骨の劣成長と下顎骨の過成長でした。 ◎初診時口腔内写真(小学1年生) いわゆる、骨格的反対咬合症例で、横顔にも反映しており顎がしゃくれた感じです。 ◎第一段階 咬み合わせの改善時(小学2年生) 咬み合わせは改善され、観察に移行します。観察中のポイントは以下のとおりです。 ①むし歯、歯肉の状態 ②永久歯交換の状態 ③顎の成長の状態 ④その他 ◎観 察(小学4年生、5月撮影) 次に示す写真は観察期間中の全身成長に伴い、下顎が出てきて再び反対咬合になった時の口腔内です。 検査、再評価し、適切な処置を施します。 ◎観 察(小学4年生、翌年1月撮影、正面写真なし) 再び、咬み合わせは改善されました。 その後、およそ2年観察しました。やはり、成長に伴い下顎が出てくる傾向がありましたが、次に示す写