矯正治療のはなし

​工藤 泰裕
もくじ内のタイトルをタップすると
本文にジャンプできます

成長期の矯正治療

矯正治療をする歯科医師に一番必要な資質は診断能力です。 矯正治療は原因にアプローチしてこそ良い治療効果を発揮します。間違った診断によって導かれた「原因」アプローチした場合、それは有害な治療となります。 ただ、トンチンカンな治療行為であっても、疑似改善することがあります。この時、術者は自分の方法が正しいものと思い込み、その後も同じ愚を繰り返すことになるので厄介です。 疑似改善とは私の考えた造語です。 「疑似」とは本物ではないが、見かけが似ていることを意味します。 つまり、間違った治療行為であっても、その手法が強引であったり、または長期に及んだ場合には、見かけ上治ったようになることがあるーこれを疑似改善と呼んでいます。 疑似の改善であるため、第三者がみても外見上になんとなく違和感を感じとれます。 症例は8才の男子、反対咬合を気にして来院されました。 私はどう診断したでしょうか。 【初診】 なぜ反対咬合になっているのかを知ることが矯正治療の第一歩です。 次に示す写真は初診時のもので同一日に撮影しました。 写真Aは前歯の早期接触部位を表しています。 このことで下顎の正常な顎運動は妨げられています。 ①上下前歯の先端が最初に接触(写真A)。 ②この衝突を回避するため、顎を前に出して咬む(写真B)。 写真A                   写真B(再掲) 上顎前歯の内側傾斜に起因する早期接触で、下顎が前方位をとることが原因のひとつであることがわかりました。 他にも原因がないか考えてみましょう。 次に示す図は、初診時の頭部エックス線規格写真の模式図です。 実線:平均値 点線:本症例 数字

混合歯列期 歯列に凸凹のある症例

歯列に凸凹がある症例をふたつ紹介します。 【症例1】                【症例2】 歯肉の上の方がもっこりしているのが分かるでしょうか。 触診すると犬歯の存在を指に感じとることができます。 犬歯の生える隙間がない状態です。 例えば、この様な状態をみて、顎が狭いと言い出す歯科医師がいるかもしれません。 私はそうは思いません。実際にノギスで計測してみると、顎のサイズは平均的な大きさであるのに対し、一本一本の歯のサイズが大きかった。 結果的に歯のサイズの総和が大きくなり、顎におさまらず凸凹になっているというのが本当のところです。 ですから、凸凹があるからといって、すぐに拡大装置を使うのは短絡的で間違いです。 詳しく診ていきましょう。 【症例1】 初診 11才 男子 乳歯と永久歯が混在する混合歯列期に相当します。 見た目の凸凹感は強いですが、前述したように顎は狭くありません。 従ってこの時点で積極的な矯正治療をする必要はありません。 当面は永久歯の生えかわりを待ちます。たぶん犬歯は八重歯になるでしょう。 左右の写真を参照してください。 小臼歯から大臼歯まで上下の歯はきちんと咬んでいます。 狭さは見当たりません。 【観察中】 13才 犬歯が想定どおり八重歯になりました。 もう一度確認します。 小臼歯から大臼歯にかけてきちんと咬んでおり、顎の狭さはありません。 検査資料を分析して診断をたてます。 抜歯分析は抜歯判定です。マルチブラケット治療をはじめます。 【治療後】 治療期間 19ヶ月 装置を外した時の写真です。 保定に移行します。 上下顎の小臼歯関係、大臼歯関係を保ったまま歯

歯並び・咬み合わせってなに?

「歯並び・咬み合わせ」の言葉の意味を確認します。 「歯並び」は歯の並んでいる様のことを言います。 「咬み合わせ」は二者が互いに合わさっている様のことを言います。 実際の症例を使って「歯並び・咬み合わせ」を表現してみましょう。 【症例1】 歯並びが悪い。 【症例2】 咬み合わせが悪い。 【症例3】 咬み合わせが悪い 症例3と症例4は咬み合わせが悪い状態でした。 さらに詳しく言うと、症例2は咬み合わせが反対咬合で、症例3は上顎前突です。 【症例4】 歯並びと咬み合わせが悪い 上顎の歯並びが凸凹で、咬み合わせが反対咬合の状態です。 【症例5】 歯並びと咬み合わせが悪い。 上下顎の歯並びが凸凹で、咬み合わせが深い状態です。 【症例6】 さて、この症例の歯並び・咬み合わせはどうでしょうか。 歯並びはそれ程悪くないが、咬み合わせが浅い状態です。 通法に従い、検査診断を経て治療を開始します。 【治療後】 動的治療期間 14ヶ月 咬み合わせが改善されました。 今回は言葉の意味を確認しました。 歯並びの悪さにもいろいろあります。 凸凹、重なり、隙間、欠損、ねじれ、その他。 咬み合わせも同様です。 反対、出っ歯、深い、浅い等々。 そして、歯並び・咬み合わせが悪い状態にあるものを不正咬合と呼んでいます。 不正咬合は症状別にいくつかのカテゴリーに分類することは出来ますが、実際の臨床の現場では教科書通りに、いつもきちんと分類できるとは限りません。状況に応じて、装置や治療方法を変えながら治療にあたります。 写真の引用は以下の通り。 【症例1】76話 歯並びを治そう 【症例2】21話 子どもの反対咬合 【症

最新記事
アーカイブ
タグから検索
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square