

30話 この症例を診断して下さい。
私と一緒に、この症例について考えてみましょう。 前回の「みにくいアヒルの子」では上の前歯の隙間について説明しました。本症例も前歯に隙間があり、同じくアグリーダックリングステージです。でも、よく見てください。問題点は別にあります、写真を見て考えてみましょう。 【初診時口腔内写真】 初診時年齢 8歳 男子 そうです、反対咬合です。不正咬合のうち、反対咬合は注意を要します。時期を間違うと、治療が困難になるからです。そして、何より診断が重要です。 反対咬合は次のタイプに分類されます。 ①歯性の反対咬合:歯の傾斜角度が、たまたま反対。 ②骨格性の反対咬合:上顎骨・下顎骨、そのものが反対。 ③機能的な反対咬合:一部の歯の接触を避け、顎を前に出す。 ④これらが組み合わさったもの。 検査資料のうち、重要なものに頭部エックス線規格写真があります。これは、一定の規格、一定の条件で撮った横顔のレントゲン写真です。 【頭部エックス線規格写真】セファロ写真とも言う。 本症例の初診時、前歯が反対咬合です。 撮っただけではダメ、分析が必要です(セファロ分析)。 レントゲン写真


29話 みにくいアヒルの子
みにくいアヒルの子の時期。アグリーダックリングステージ(Ugly duckling stage)。 永久歯の前歯が生える時期のことで、一時的に正中離開が生じて、みにくいけれどその後に側切歯、犬歯が生えることで隙間は閉鎖され美しくなる。このことを、童話「みにくいアヒルの子」に例えて呼んでいます。 つまり、 ①生え始めの前歯に隙間があっても慌てなくていい。 ②自然に治ることもある。 ということです。ここまでは、自然治癒もあり得るとした、イイお話し。しかしながら、なかには ③自然には治らないこともある。 今回は③のケースについて取り上げます。 【初診時口腔内写真】 下顎の前歯が生えそろい上顎の前歯が生えてきます。 この時、 ア、単に、逆V字状なのか。 イ、ねじれて、逆V字状なのか。 がポイントです。模型で説明します。 【アの場合】 隣の歯が生えてくるに従い、押されて隙間は閉鎖する。 【イの場合】 ねじれているため、隣の歯と接していない。 隣の歯が生えても閉鎖しない。 もう一度、初めの口腔内写真に戻り、本症例がどちらのタイプか確認してください。このタ


28話 歯の凸凹は予防できるのか。
将来の永久歯の凸凹を予測して、あらかじめ予防出来るものだろうか。ちまたでは、6才臼歯がやっと生えた程度の低年齢児に対し、拡大装置の使用で永久歯の凸凹を回避しようとする治療方法があるようです。 わたしはの答えはこうです。「必要のない治療をする必要はない」 理由は ・そもそも、現在症状がない。 ・将来、不正咬合になるとも限らない。 ・治療効果が約束できない。 ・治療期間が長くなり、効率が悪い。 ・症状が出た時点での治療で、間に合う。 ・そのほうが効率的。 ・つまり、低年齢児の積極的な治療は不要。 レントゲン画像上で後続の永久歯が混みあっている状態を「顎が狭い」とし、治療を勧める場合があるかもしれません。そこでレントゲンでの歯の見え方を説明します。まず下顎と上顎では見え方が違います。下顎は先行する乳歯の真下に、後続の永久歯があります。上顎では後続の永久歯が「ぶどうの房」のように混み合って見えます。これは上顎骨は鼻の骨と接しており、複雑な形をしているため後続永久歯が寄り添うように待機しているからです。けして、顎が狭いから混み合っているのではなく、上顎骨の