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78話 抜くか抜かないかの話2

口の中だけで判断していけないのは、重々承知の上であえて質問します。

次に示す二つの症例のうち、症例Aは歯列に凸凹があり、症例Bにはありません。

どちらかが抜歯症例で、どちらかが非抜歯症例です。

あなたは、どっちがどっちだと思いますか。

症例A





症例B






















歯列に凸凹があると抜歯で、凸凹がないと非抜歯でしょうか

次に、ふたつの症例の横顔を示します。

図は初診時の頭部エックス線規格写真にトレーシングペーパーを貼り、顔の外形を写し取ったものです。

症例A 






症例B




















前歯付近に点線があります。この点線は、一定のルールに従い作図し求められるもので、ここでは基準線と呼ぶことにします。この基準線に対する下顎の前歯の距離は以下の通りです。


  症例A 前方 8㎜

  症例B 前方17㎜


私が利用している日本人のデータの平均値は、基準線の前方約8㎜。つまり、症例Aの前歯の位置はこのままで良いことがわかります。言い換えればこの位置を大きく変えないように治療しなければなりません。一方、症例Bは、かなり口元が突出しており、治療に際しては9㎜後ろに下げた方が理想的であると解釈します。

抜歯・非抜歯を判断するには、歯列の凸凹の程度のほか、歯の位置や傾斜角度、顎の状態、口元の突出の程度などを全体に考慮する必要があります。

【症例A】 (症例Bは 45話 歯を抜く矯正 を参照してください)

13才 男性

診断の結果、非抜歯でマルチブラケット治療を行います。















































【治療後】

治療期間 15カ月















































症例Aは抜歯の必要はなく、症例Bは抜歯が必要でした。

抜歯・非抜歯はイメージや感情論で決めるのではなく、必要か必要でないかを矯正歯科学的に分析して判定します。 さて、ここでもうひとつ症例を示します。

























この症例の診断では、抜歯と判定されています。

この様な、抜歯が必要な症例を、非抜歯で治療をすることが良いことでしょうか。

無理やり非抜歯にするため、次のような方法が行われます。

まず、本来は拡大する必要のない上顎を急速拡大装置で拡大します。狭くない上顎を拡大すると広すぎる上顎になり、顔が変形します。上顎の拡大によって下顎との咬み合わせが離れるため、下顎にも拡大装置を付けて拡大します。ここにも落とし穴があります。下顎骨は解剖学的に拡大が不可能であるにもかかわらず装置を入れた結果、歯が外側に傾斜します。傾斜側である外側の骨は圧迫されて薄くなり、ときには部分的に骨吸収し無くなっている事例もあります。

矯正歯科学を理解していないものによる、無責任で強引な行為は顎顔面を破綻させます。

すなわち、上顎の拡大で顔は横に広がり扁平になる、歯の傾斜で頬っぺたが膨らむことで、平たい顔が強調されかつ口元が突出した、変な顔になります。上下の歯は傾斜で力に対応するため咬合は不安定。これらは顎顔面が破綻した状態といえます。顔は元にはもどりません。抜かない矯正、非抜歯絶対主義が生んだ結果です。

抜歯が悪で、非抜歯が善でしょうか。

正しく診断した結果が抜歯であれば抜歯、これは善。非抜歯であれば非抜歯、これも善。抜歯しなければならない症例を、無理やり非抜歯で治療をすることが悪なのです。

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