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28話 歯の凸凹は予防できるのか。

将来の永久歯の凸凹を予測して、あらかじめ予防出来るものだろうか。ちまたでは、6才臼歯がやっと生えた程度の低年齢児に対し、拡大装置の使用で永久歯の凸凹を回避しようとする治療方法があるようです。


わたしはの答えはこうです。「必要のない治療をする必要はない」

理由は

・そもそも、現在症状がない。

・将来、不正咬合になるとも限らない。

・治療効果が約束できない。

・治療期間が長くなり、効率が悪い。

・症状が出た時点での治療で、間に合う。

・そのほうが効率的。

・つまり、低年齢児の積極的な治療は不要。


レントゲン画像上で後続の永久歯が混みあっている状態を「顎が狭い」とし、治療を勧める場合があるかもしれません。そこでレントゲンでの歯の見え方を説明します。まず下顎と上顎では見え方が違います。下顎は先行する乳歯の真下に、後続の永久歯があります。上顎では後続の永久歯が「ぶどうの房」のように混み合って見えます。これは上顎骨は鼻の骨と接しており、複雑な形をしているため後続永久歯が寄り添うように待機しているからです。けして、顎が狭いから混み合っているのではなく、上顎骨の構造的な理由で、混み合っている様に見えるだけです。

この事を覚えておいて下さい。


初診時年齢  10歳  男子


【初診時口腔内写真】

検査・診断をします。














































本症例の初診時の状態です。この時点で治療出来ることは、それ程ありません。あるとすれば、待つことです。一枚目の写真を見てください。犬歯部相当部の歯肉が盛り上がっています。八重歯の前兆ですが生えるのを待ちます。今、出来ることがあるとすれば、前歯の一部に過度な接触があるので、この機能的障害を除去することくらいです。次の写真の丸印のところです。















【マルチブラケット治療前】

全ての永久歯が生えるのを待って、マルチブラケット治療をはじまます。














































【マルチブラケット治療終了時】













































歯列の凸凹は解消され美しくて、機能的な歯並び・咬み合わせになりました。

冒頭の、将来の永久歯の凸凹を予測して、あらかじめ予防出来るのか。この点に関してもう少し説明します。そしてここから、「予測」と「予防」を分けて考えます。結論から言って予測は出来ません。レントゲン画像の見え方について説明しました。画像からは将来の凸凹の量は予測できません。予防はある程度出来ます。ただし、条件が必要です。下顎の4本の永久歯が生え変わりを待ちます。この4本の重なりをみます。重なりが少なければ、乳歯を保隙して永久歯の凸凹を回避できる可能性があります。(保隙:ほげき、隙間を確保する意味)


矯正治療で大切なのは、適切な時期に適切な治療を施すことです。低年齢児の積極的な治療は必要ありません。


「必要のない治療をする必要はない」ということです。

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