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100話  歯の移動を制御するということ

歯や顎はどこに移動させればいいでしょう。


あっちか、こっちか、そしてどのくらいか。

矯正治療では、この目標をきちんと決めておく必要があります。

そのためには、精確な検査資料を採得し正確に分析します。

計算はコンピューターがやってくれますが、その数値を解釈するのは人間です。

【プロフィログラム】

全ての症例は、頭部エックス線規格写真(横顔のレントゲン)を撮ります。

下図は、頭部エックス線規格写真を模式的に表して、平均値と重ね合わせたものです。

ここでは患者を赤線、同年齢の平均値を黒線にしています。

また、歯・顎・顔の外観のランドマークを距離計測、角度計測し、実測値・平均値・標準偏差を数値化しています。

ここから症例を提示します。

一症例につき画像は、初診時と治療後の口腔内写真、初診時と治療後の頭部エックス線規格写真、重ね合わせ図の5枚です。重ね合わせ図では初診を実線で、治療後を点線で表しています。

尚、各症例は過去の記事を再掲したもので、詳しい解説はそちらを参照してください。

今回は歯や顎の移動で顔の外観が良くなることを再認識していただきたい。


【症例1】

12才 女子 反対咬合症例

初診時









改善時












頭部X線規格写真

初診時




















改善時




















頭部X線規格写真の重ね合わせ図

















骨格的反対咬合の顔の外観は特徴的ですが、4ヶ月で改善しました。

子どもの矯正治療では、本人が「成長」のどの段階にあるかが重要な要素です。

適切な時期に適切な治療を施すことで、効率の良い治療が可能です。


【症例2】

15才 女子 上顎前突症例

初診時









治療後













頭部X線規格写真

初診時




















治療後




















重ね合わせ図



















治療期間は22ヶ月。上顎前歯を後退させると、それに連動して上唇もさがります。


【症例3】

21才 女性 上顎前突症例

初診時









治療後













頭部X線規格写真

初診時





















治療後























重ね合わせ図





















以前は唇を閉じるために、遠くまで下唇を運ばなければならなかった。

上唇が後退したことで口唇閉鎖が容易となりました。きれいな横顔です。


【症例4】

成人 女性 上顎前突症例

初診時







治療後













頭部X線規格写真

初診時



















治療後




















重ね合わせ図

















治療期間18ヶ月。

歯を後退すると唇もさがるのは明白ですが、ここで注目してほしいのはオトガイ部(顎の先)の皮膚の形です。皮膚の緊張が解消し自然な丸みを帯びることで、横顔がきれいになっています。


【症例5】

成人 女性 上下顎前突症例

初診時









治療後













頭部X線規格写真

初診時




















治療後





















重ね合わせ図


















治療期間16ヶ月。

歯を位置付ける場所は、頭部エックス線規格写真から算出される数値をもとに決定します。上下前歯の後退に連動した口唇の移動とオトガイ部皮膚の緊張緩和は横顔の改善に貢献しています。


【症例6】

17才 女子 上下顎前突症例

初診時








治療後













頭部X線規格写真

初診時





















治療後




















重ね合わせ図





















治療期間23ヶ月。前歯の移動様式に着目して各症例を見なおすとおもしろいでしょう。傾斜移動、平行移動、根尖方向へ、歯冠方向へといろいろあります。これらは全て術者の意図した動きです。

歯をコントロールするとはこういう事を言います。


【症例7】

成人 女性 叢生症例

初診時









治療後













頭部X線規格写真

初診時




















治療後




















重ね合わせ図


















抜歯・非抜歯の決定は、頭部エックス線規格写真から算出した数値と模型分析で行います。イメージや感情で決めるものではありません。もし本症例を無理やり非抜歯で治療したならば、初診よりも歯が外側に傾斜して口元は突出、鳥のくちばしのようになるでしょう。


【症例8】

15才 女子 上下顎前突症例

初診時







治療後












頭部X線規格写真

初診時




















治療後





















重ね合わせ図



















重ね合わせ図は、製作に手間と熟練を要しますが、歯と顎そして軟組織の移動方向・量を知る重要な資料です。術者の意図通りに歯と顎が移動したかなど、治療効果を検証します。

冒頭、歯と顎の移動はあっちか、こっちか、そしてどのくらいかと言いましたが、術者が歯の移動をコントロール出来ずに、歯がめったやたらと動いたのでは治るものも治りません。

正しい診断をして、治療計画をたて歯と顎の移動を計画通りにコントロールして、目標を達成する。この当たり前の事を淡々と行います。魔法はありません。


掲載の症例については、以下を参照してください。

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