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90話 急速拡大装置という病

「不正咬合の解決は、その原因にアプローチすることでなされる」

しかしながら、不正咬合の種類に関係なく全ての症例に対し、急速拡大装置を使用する歯科医師がいます。彼らの説明用パンフレットやホームページには、急速拡大装置で上顎を拡大にすることによる独自の考えがうたわれており、装置の使用が大前提になっています。検査・診断をする前から急速拡大装置の使用が決まっているのです。不正咬合の原因を考えた結果の処方ではないことは、このことからも明らかです。 原因にアプローチするためには、まず資料を採り分析する。その結果として問題点が判明し、そこを改善すべく必要な装置が処方されるのが普通です。装置は最後に決まるものであり、原因によっては装置の種類も違うはずです。

最初から急速拡大装置ありきの治療が、いかにトンチンカンかお分かりいただけただろうか。ただ、彼らなりの拡大の理由はある。「今の子どもは顎が発達していない」と言うのです。これも根拠のない話で、この点については 85話 顎が発達しない? を参照してください。

以下に、反対咬合症例を6例示します。

同じカテゴリーとしての反対咬合であっても、原因が異なれば治療法も使用する矯正装置も違います。なお、顔の正面・側面の写真はブログでは掲載しませが、私の手元にはあります。

【症例1】

初診 8才 男子

主な原因:上顎骨の後方位

装  置:上顎前方位牽引装置
























反対咬合の改善

























【症例2】

初診 8才 男子

主な原因:上顎前歯の傾斜

装  置:ライトワイヤー 
























反対咬合の改善

























【症例3】

初診 8才 男子

主な原因:上顎前歯の傾斜、下顎骨の前方位

装  置:ライトワイヤー、チンキャップ
























反対咬合の改善
























【症例4】

初診 7才 男子

主な原因:下顎骨の過成長

装  置:上顎前方牽引装置
























反対咬合の改善
























【症例5】

初診 10才 男子

主な原因:上顎前歯の傾斜、下顎骨の前方位

装  置:ライトワイヤー、チンキャップ


























反対咬合の改善
























【症例6】

初診 9才 男子

主な原因:下顎骨の過成長

装  置:上顎前方牽引装置