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85話 成長と治療時期

成長とは何か。

成長とはものが大きくなることをいいます。子どもの体は大きくなって大人の大きさまで達します。

矯正治療では、この成長を利用することがあります。私が治療時期にこだわるのはこのためです。

骨格性の上顎前突症例、男性です。

【初診】

11才

検査資料を分析して診断をします。本症例の治療計画は以下の通りです。

第一段階:成長のコントロールによる顎関係の改善

観  察:

第二段階:全体の歯並びの改善

観  察:保定















































写真は掲載していませんが、初診時の横顔は上顎が出て、下顎が後退した感じです。

上顎骨と下顎骨の前後的関係に大きな差があり、横顔に反映しています。

第一段階の治療の目的は、この顎の関係を修正することです。

冒頭に、矯正治療で成長を利用すると言いました。

上顎骨の成長を抑え、下顎骨の成長を促進するとどうなるでしょうか。やってみます。

【第一段階】

13才


























【犬歯にマークを付けて比較】

初診














第一段階終了時













犬歯関係が変わっているのがわかります。上顎犬歯に対し下顎犬歯がこの位置にあるのが正しい状態です。よく見ると臼歯関係も変化しています。

【第二段階】

16才

顎の前後的関係は改善されました。

ここまで前歯には装置をつけていないにもかかわらず、出っ歯の感じは見あたりません。

















































この時点でもう一度、検査・診断をします。非抜歯でマルチブラケット治療を開始します。

【治療後】

動的治療期間 16ヶ月














































ここまでの治療をふりかえります。

第一段階は、上顎前突の状態にあった上下顎の関係を修正する期間にあてがいました。11才から16才まで、身長は28.5cm伸びました。

この時、上顎骨の成長を抑え、下顎骨の成長を促進させればいいのです。

第二段階の時点で顎の関係は修正されていますので、あとは全体の歯並びの改善を行います。

今回示した上顎前突(骨格性)のほか、反対咬合もまた顎骨の前後的関係に問題のあることがあります。歯科医師は、この様な骨格的な不正咬合の矯正治療をする時、患者が成長過程のどの段階にいるのかを知っておく必要があります。成長の力は、うまく利用すれば治療上の味方になりますし、場合によっては敵にもなり得ます。

私がいつも言う、適切な時期に適切な治療をしなさいとは、ヒトの成長を理解してその時期に応じた、正しい治療方法を適応しなさいと言う事にほかなりません。

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