歯を抜いた隙間はどう利用するのか

矯正治療の時、個々の歯があっちに行ったり、こっちに来たりと好き勝手に動いたのでは、治る歯並びも治りません。

そこで、移動してほしい歯と移動してほしくない歯を決めて、それぞれを制御する必要があります。いま、前者を移動部、後者を固定部と呼んでおきます。

ここで例え話をひとつ。

公園の池に浮かぶ手漕ぎボートを想像してほしい。水の流れは無く、無風です。

ボートAとボートBは一定の距離をおいて離れており、それぞれ一人乗っている。

この両者に綱引きをしてもらう(オールは持っていない)。

湖上の綱引。

両者は等しく移動し接近するはずです。AとB双方が移動部ということです。

次に、ボートAは錨(Anchor、アンカー)を下ろします。

綱引き開始。

今度はボートAはその場を動かず、ボートBが移動してAに接近しました。

この時ボートAは固定部、ボートBは移動部となりました。

話を戻します。

矯正治療ではこの固定部と移動部の区別が重要な意味を持ちます。

固定部は固定源と言い換えてもいいでしょう。

【初診】

12才 男性

通常は固定源を臼歯に求めます。

本症例初診時の上の大臼歯と下の大臼歯の咬み方は良好です(臼歯関係)。

この臼歯関係を崩さないように、すなわち、臼歯が前の方に移動してズレることなく治療する必要があります。

検査・診断 の結果、小臼歯の抜歯が必要です。

マルチブラケット治療を開始します。

【治療後】

治療期間 16ヶ月

きれいな歯並び・嚙み合わせの完成です。臼歯関係はきちんと維持されています。

本症例は小臼歯の抜歯が必要でした。第一小臼歯一本の抜歯により得られるスペースは8.0㎜(片側)。このこの抜歯空隙(ばっしくうげき)を凸凹の解消と前歯の後退に利用します。

抜歯空隙の後ろには臼歯が存在し、前方には犬歯と前歯が存在します。

前出のボートAを臼歯に、ボートBを犬歯と前歯に例えた場合、

抜歯空隙を挟んで双方が綱引きをしている格好になっています(下の写真参照)。

                (本症例とは別の症例です)

この綱引きに大会で臼歯が劣勢になると、その分だけ抜歯空隙が消費されます。すると凸凹の解消と前歯の後退に利用する分に余裕がなくなります。従って、術者には移動してほしい歯と移動してほしくない歯を制御するスキルが要求されることとなります。

看板に矯正歯科を標榜していても、そこからは技術レベルを知ることは出来ません。

歯科医院選びは慎重にした方が良いでしょう。

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