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62話 抜くか抜かないかの話

歯を抜く矯正治療、歯を抜かない矯正治療。

そもそも抜く抜かないはどのようにして決めるのか説明します。

診断には精確な検査資料が必要です。

例えば、頭部エックス線規格写真(横顔のレントゲン)の撮影時に0. 数ミリでも咬み合わせにずれがあっては、そのレントゲン写真は使えません。石膏模型では、歯は当然として、顎の隅々まで精確に解剖学的構造が再現されている必要があります。当然レントゲン写真と石膏模型の咬み合わせは同じであるはずです。一般診査では症例の特徴を把握します。

頭部X線規格写真を分析する(セファロ分析)。

①レントゲン写真にトレーシングペーパーを重ねあわせ、セロハンテープで固定する。

②解剖学的構造をシャープペンシルでなぞり、トレーシングペーパーに転写する。

③得られた図に、所定の法則にのっとり基準となる点をマークする。

④各点を結ぶ角度や距離を計測し、その年齢の日本人平均値と比較する。

模型分析をする。

①歯列の長さと幅を計測する。

②歯槽基底(骨)の長さと幅を計測する。

③個々の歯の大きさを計測し、かつその総和を算出する。

④凸凹の量を算出する。

⑤得られたデータは日本人の平均値と比較する。

抜歯分析をする。

抜歯分析はセファロ分析項目の前歯の位置(口元の突出ぐあい)と模型分析項目の凸凹の量に該当する数値から計算式で求めます。結果は数値で表されます。その他に一般診査などを参考にして総合的に抜歯・非抜歯を判断します。

こうして抜歯・非抜歯が決まります。

非抜歯判定は歯を抜かない矯正治療に、抜歯判定は歯を抜く矯正治療になります。しかしながら、何事もボーダーラインというものがあります。私は抜歯判定であっても、ボーダーラインに近いものは、非抜歯治療になるように治療方針を組み立てます。

今回は、そのボーダーラインの症例です。非抜歯になるように手を尽くします。

【初診時】

17才 男性

下顎の前歯に凸凹があります。

セファロ分析の結果、下顎前歯の位置は平均値よりやや前方に位置していました。
















































【治療後】

治療期間 18ヶ月

下顎の前歯の凸凹を解消する過程で、口元が突出しないように工夫しました。

全体の咬み合わせも良好となりました。

抜歯症例であってもボーダーラインの場合であれば、非抜歯治療が可能なこともあります。なお、歯列の拡大はしていません。歯列を拡大する場合は、狭いという根拠が示されたときに限られます。本症例の歯列と歯槽基底の値は標準でした。















































狭くない歯列を拡大したり、拡大装置の適応外使用による事故があります。患者側の防衛策としては、担当医が日本矯正歯科学会認定医であるか、同学会のホームページで確認すると良いでしょう。

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